インドを訪問

 謹賀新年。今年も読者の皆さまにとって良い年になりますように祈念申し上げます。

 十二月はじめ、久々にインドに行った。

 経緯はこういうことだ。インドでの某プロジェクトの調査事業を当社のクライアントが受注した。その応募の際に、経済学博士号取得者がメンバーに必要だということで、私の名前を貸した。名前を貸しただけのはずだったが、ふたを開けると、クライアントに同行することになっていたのだ。

 スペイン・サンセバスチャンの出張から戻った翌々日からさっそくインドに出発だ。

 調査事業なので、当社のクライアントも発注元から予算の縛りがある。単純に東京・デリーを日系航空会社で往復すれば一番楽なのだが、そのビジネスクラスの料金が予算を超過するということで、行きはタイ国際航空のバンコク経由でデリーまで、帰りはエア・インディアだった。

 インドは二度目の訪問だ。一度目はコロナの前、友人がインドの日本商工会の幹部に転職したことをきっかけに行った。

 今回は、紅茶で有名なアッサム地方のプロジェクトだったので、デリーからアッサム州のグワハティーまで移動した。

 事前のネット情報では、アッサム州はインドの中でも治安が悪いランキング上位となっていた。インドに初めて行くというクライアントの担当者と二人で、治安の悪いアッサムに行くのは無謀だと思い、地元在住のその友人にお願いして一緒に行ってもらった。

 結論から言えば、アッサムは田舎で、適切な行動さえすればデリーよりも安全ではないかと思ったほどだ。

また、今回のインドの印象は、前回とは違った。

前回は、牛・犬・人が蠅まみれで道路に転がっているインドという先入観が見事に裏切られたが、今回は、そんなレベルを超えて、インドの発展ぶりに驚き、世界を牽引するエネルギーを感じた。

早朝から混雑するデリー空港

発展するインド

まずはデリーの喧騒。バンコク経由で行ったためデリー空港到着は夜中の十二時。ビジネスクラスで行き、事前にビザを取得しておけば、荷物受取台まではスムーズだ。荷物が出てくるのに一時間くらいかかり、真夜中一時に空港の外に出たが、「今、何時なの?」というくらいに人がたくさんいた。ホテルまでの道路も渋滞があるほど混雑していた。東京の真夜中の道路が閑散としているのとは対照的だ。
翌朝、グワハティー行きの飛行機に乗るために早朝五時半にホテルをチェックアウト。空港には早朝六時に着いたのだが、空港の建物に入る前から行列ができていた。さすが来年には世界一の人口を誇る国だけあって、とにかく活気は半端ない。
インドと言えばカレーだ。前回はデリーのインド系ホテルに泊まり、カレーしか食べ物がないことに辟易した。それに懲りて、今回は欧米系のホテルに泊まったのだが、結局、朝ごはんからカレーしかなかった。カレー以外であったのは、パンとベーコンくらいだ。
インドでは、朝食専用カレーがある。朝以外に食べないらしいサンバーというカレーは、見かけはトマトスープのようにさらっとしているが、辛かった。また、カレーといえば、ライスかナンで食べると思うだろうが、朝ごはんはイドリという蒸しパンだ。
様々な種類のカレーの中でも、口に合うものを選べば美味しく食べられる。しかし、強力な香辛料とギー(油)でお腹をこわす人もいるというので、控えめに食べた。
また、インドはウイスキー大国だ。世界のウイスキー消費量はインドが世界一ということだった。サントリーもインド向けにブレンドした新商品を販売しているほどだ。インド産のウイスキーはピンキリだが、インドの高級ウイスキーはアイラ・ウイスキーのようにスモーキーなシングルモルトだった。
私は歯磨きも水道の水を使わずにミネラルウォーターだったが、現地在住の友人によると「都市伝説」だというぐらい、インドの近代化は急速に進んでいる。
読者の中に、以前の私のように、インドを敬遠している人がいるとすれば、一度行ってみてはいかがだろうか。良い悪いは別として、刺激を受けることは間違いない。

アッサムで生産している日本酒

筆者プロフィール

石井 至(いしい・いたる)
昭和四十年、北海道生まれ。東京大学医学部卒。フランス系のインドスエズ銀行を経て、平成九年に石井兄弟社設立。同社代表取締役。金融ハイテク技術コンサルタントを行う他、東京にて幼児教室「アンテナ・プレスクール」を主宰。