昨年来、議論される様になった「防衛費増額」。前回に引き続き、この問題を今回の「苦言・直言」でも取り上げます。

 その前に、建国記念の日の祝典は、政府主催で堂々と挙行するべきであります。玉置和郎氏も生前、このことは強く訴えておりました。

 日本国の総理として最初にすべきことは、何事も原点に戻る事です。日本の紀元は、建国記念日の二月十一日です。この日に政府主催で堂々と祝典を行うべきです。

 防衛費の増額を論じる前に、やるべき事があります。

 「憲法改正」であります。この事を論ぜず、枝葉末節の事ばかりを論じている岸田総理は,おのずからして総理の器ではありません。

 「木を見て森を見ず」のことわざを思い出せ。

 さて、私個人としては防衛費の増額には「賛成」です。防衛費、言うなれば「軍事費」「国防費」と換言できるでしょう。国を守る為の予算はいくらかけても際限はありません。

 国防とは本来、我が国の「国土」、「国民」、そして「国体」を守る事を第一義に考えるものです。しかし日本の場合は「米国からの要求」に従う事が第一義とされてしまいます。

 今までタブーであった「敵基地攻撃論」も、ロシアのウクライナ侵攻が背景にはあったとは言え、米国のトマホーク購入に端を発した問題です。

 今回の「防衛費増額」問題は、ある意味、戦後のタブーを打ち破り、憲法改正にも繋がるべきテーマとも言えますが、それが「米国製兵器の爆買い」で終わるのであれば意味はありません。

 たとえ米国からの要望から始まった問題でも、それを機に我が国の国防に関して真剣に考え、「自分の国を自分で守る」という方向に持って行けば良いのですが、残念ながら、岸田総理にその様な思考はありません。
 
 一月に行われた欧米五か国の訪問でも、岸田総理の念頭にあったのは「いかに外国の首脳に自分を良く見せるか」だけでした。

 最後の訪問先米国でも、バイデン米大統領から「真の友人」と呼ばれる程の信頼を得たと終始ご満悦の岸田総理でしたが、バイデン氏から肩を手に掴まれる2ショット画像を見た時には、「これは駄目だ」と思いました。

 欧米では肩を手で掴むのは「格下の者に対するアピール」。だからこれはまさに日本が米国の従属国だとアピールされている図式でしかありません。

 通常なら、いくら「真の友人」と言えども、こんな事をされたら手を払って否定すべきでしょう。
しかし岸田総理はバイデン氏に肩を掴まれても喜んで笑顔を見せるだけ。まさに今回の欧米訪問は「忠犬ポチのおべっか外交」です。

 本当に岸田総理が日本のトップであるならば、我が国国民の立場を代弁するべきでしょう。独立国であるのにいつまでも占領状態が続く矛盾を諸外国にも説明し、その解消を訴えるべきでした。

 岸田氏だけでなく、過去の歴代総理にしても然り。日米地位協定の問題を一人でも提起した人はいましたか? 日米合同委員会の存在についてはどうでしょうか? 国連憲章に残る「敵国条項」に関しては? 「占領軍」に過ぎない在日米軍がいつまでも我が国に居座る問題を指摘した人はいたでしょうか?

 岸田総理は、自分の選挙区である広島にバイデン氏他、欧米首脳を招待し、サミットを成功させる事しか頭にないのでしょう。保身と自己満足しか念頭にない総理は不要です。サミットのホストの資格もありません。

二十一世紀の「合従策」―中堅国家連合で大国と対峙せよ!

 我が国を取り巻く状況が以前より変化している事は確かです。今はまさに冷戦の再来、もしくは第三次世界大戦前夜と言っても過言ではありません。

 我が国ではロシアより中国の動向に注意するべきです。

 中国の狙いは沖縄と台湾です。特に沖縄は中国海軍が外洋に出る入り口である故に狙ってくるでしょう。

 軍事行動に出る以前に、「協力者」を使って日本から分断させ、中国軍を呼び込んでしまう手段も考えられます。

 昨年九月に行われた沖縄県知事選挙では玉城デニー氏が再選されました。玉城氏は以前、「中国の一帯一路政策に『日本の出入り口』として、沖縄を活用させて欲しい」と提起し、論争を呼びました。

 確かに沖縄の米軍基地問題は深刻ですが、この基地問題を利用して中国が「協力者」として玉城氏を担ぎ、勢力を伸ばしてくるのは看過できません。沖縄は日本の領土であり、米国のものでも中国のものでもないのです。

 しかしこれも、「自分の国は自分で守る」という発想が生まれて来ない故の問題と言えます。

 米国も中国も、国益を守る為に侵略戦争を繰り返す「戦時国家」である事は変わりません。こうした国は外国に軍事侵攻を繰り返してはその国を崩壊させる。「自国が繁栄する為には他国がどんなに不幸な目に遭っても良い」と平気で考えます。

 チベット、ウイグルを圧政下に置く中国も、アフガン、イラクに軍事侵攻し、ウクライナを焚きつけてロシアと戦争させる米国も本性は変わりません。

 米・中は共に覇権主義国家であり、軍事力を平気で行使する国である以上、どちらともに与する訳には行きません。

 しかし我が国の外交政策はいつでも「米・中どちらにつくか」の二択に終始しています。いずれかの強国につくしかない「事大主義」では何の未来も見いだせないでしょう。

 今回の岸田総理の訪問では、英国と「部隊間協力円滑化協定」が結ばれました。この協定では、日英の部隊が互いの国を訪問し、協力活動を行う際の手続き、部隊の地位に関して円滑化を求める事が約束されました。

 これにより、日英両国の艦船が寄港する事や、共同演習をする事も簡素化されました。
日本が円滑化協定を結ぶのは豪州に続いて二国目です。巷では「日英同盟の復活か?」とも評されていますが、私としては英国との協定は歓迎しています。

 英国はかつては覇権国家でしたが、今は中堅国家に落ち着いており、何より議会政治を重んじています。米中とは違って信頼できる国と言えます。

 大国と対抗する為に他の大国の手を借りるのではなく、日本と同程度の中堅国を集合させて大国と対抗すべきでしょう。

 所謂「合従連衡」ですが、ここで言えば米中どちらかと組むのは「連衡」、どちらの手も借りずに中堅国家を集めて対抗するのは「合従」です。

 英国や豪州も中国の海洋進出は懸念しています。日本と国益が一致しています。国益を第一義に考えれば、共に手を結べる相手ではないでしょうか。

積極財政と国防論—亡国を招く緊縮経済

 さて、「国を守る予算は際限がない」と前述しましたが、これはまさにその通り、国民、国土を守るのが国家の役目であるなら、「財源がない」なんて言う事はできないはずです。

 私は以前より国産兵器の開発を提言していましたが…、これに対しては「コスパ(コストパフォーマンス)が悪い」との反対意見が寄せられます。

 「在日米軍を撤退させ、日本が独自で軍隊を保有し、全て自国で賄う事となったら、増税となり、国民負担は今よりも重くなる」という意見もあります。しかし、財政面優先で国防を左右してはいけません。

 防衛費増額の議論でも、「財源」がネックとなり、自民党内でも大いに議論されました。

 岸田総理は防衛費の財源を法人税、たばこ税、復興税に求めていますが、復興税等の目的税はその目的が法に定められているはずです。被災地の復興を蔑ろにして違う目的に使うなど、言語道断でしょう。

 ならば最初から「防衛税」という税を新設して、国民を説得すべきでしょうが、国民からの反発を買いやすい為かそれはやりません。政策よりも総理の椅子の方が大事なのでしょう。

 政府は莫大な国家予算を取っておきながら、使途不明金が多すぎます。何に使ったのか明確にできない例が多すぎて、国民から信用されていません。これで国民に理解を求めるなんてほとんど不可能でしょう。

 財源論に関しては、私は以前に「国債発行による積極財政」を提案していました(『レコンキスタ』五一一号、令和三年十二月)。

 もう一度これに関して述べれば…、日本の財政は国債発行で赤字を賄っています。国債を買っているのは国民であり、「国家の借金」は「国民の財産」と言えます。

 故に財政破綻はなく、政府は国債を発行していけば、増税に頼る事なく財源を確保できるはずです。
しかしこの手の案は「机上の空論」として片付けられてしまいます。「際限ない国債発行はインフレを招く」「将来の世代にツケを回す事になる」と反対されます。

 しかし、現在の緊縮経済優先の財政が「将来の世代」さえも潰してしまっているのは確かです。
度重なる消費税増税に加え、景気の動向は芳しくなく、さらに値上げラッシュで国民生活は窮乏しています。このタイミングで「防衛税増税」を言って、誰が支持するのでしょうか?

 いくら国防が緊急の課題でも、岸田政権に国民の信頼が寄せられていない以上、誰も支持しないでしょう。むしろ「国民が窮乏しても兵器を買う気なのか?」と、国防政策に対して不信が生まれます。
これは国家観がなく、対米追従しか頭にない岸田総理と、財務省官僚に原因があります。岸田総理と財務省は国防上最大の障害と言えます。

 自民党内の議論では、高市早苗氏が国債発行を訴えていました。自民党には数少ないながらも積極財政派がまだ頑張っています。

 自民党は本来「自由に議論を闊達に主張し合う党」でした。だからこそ高市氏の様な人が頑張って主張して欲しいのです。岸田政権がかつての小泉政権の様に「政府方針に逆らうものは出て行け!」と、横暴な手段に出ることがないよう願うばかりです。。

 私も積極財政を唱える者として、自民党内の「積極財政派」を応援して行きたいと思います。

国民の声を「聞く力」がない総理は失格だ!

 私が以前より提案しているのは「国産兵器の開発」。これに関してももう一度、提起しておきます。
「自国は自分で守る」のが国防の第一方針です。外国製兵器や外国軍に頼る国防など本来あり得ません。

 兵器の開発は国防だけでなく、自国の技術を維持する上でも有効な手段と言えます。例えばミサイルの開発はロケット技術の向上にも繋がります。

 日本の技術力は本来優れたものでした。特に潜水艦は、ほとんど音を発せずに長時間潜航でき、最深度の海底でも潜航でき、世界的にも高く評価されています。

 兵器開発は非軍事面の分野でも活用できます。だからこそ国の基幹産業として重要視するべきでした。

 戦後、日本の復活を恐れたGHQにより、こうした技術が全て封印されてしまった故に、日本は立ち遅れてしまったのですが、日本の独立を訴えるならば、兵器の自国開発は避けられないはずです。
核開発もタブーを越えて着手すべきです。核は原発にも転用できます。

 原子炉に関しては、小型で安全性に優れた次世代新型炉を東芝が開発しています。原発はエネルギー自給の面からも注目すべきでしょう。

 前にも述べましたが、コロナのワクチンも本来、自国で開発できたはずです。しかし政府は欧米のメーカーの要望だけを聞き、国内のメーカーを蔑ろにしてきました。何故自国の製品を信頼しないのでしょうか?

 国防政策では「財源がない」と…お門違いの財務官僚や緊縮財政の御用学者が反対しました。
一方でコロナ対策ではおよそ専門家と言えない者が有識者会議の座長となり、感染対策をリードしていましたが、どちらもうまく行きませんでした。

 専門家でもない者が「学識者」である故に口を出す…日本は悪しき「権威主義」がまだ蔓延っています。彼らは政府のトップに優遇されたいという保身しか頭にありません。そんな人間に国の行く末を左右されたくないのです。

 こうした学識者をありがたるのは、現代の科挙制度と言える「国家公務員試験」の弊害です。いくら東大・京大卒だからと言っても国家観がない者は重用すべきではないでしょう。

 さて、これも前回少し触れましたが、コロナ時代の弊害は「オンライン」です。

 人と会う事がなくなり、議論を交わす機会もなくなりました。これにより国民の生活も閉鎖的になって行きました。

 結果として、「人の話を聞かない」「自分で物事を考えない」者が横行しています。

 政府、マスコミ、有識者も「自分で物事を考える力」を失いました。大衆もそうです。結果として何ら能力もない人間が学歴だけで重用され、専門家でもないのに専門家面をしてテレビなどに露出し、世論を操る様になります。

 こうした者に見られる傾向は、「人の話を聞かない」「約束を守らない」です。

 今の政治家は特に約束を守りません。岸田総理がその一人である事は言うまでもないでしょう。国民の声を聞かない者は即刻退場すべきです。