〜旧統一教会騒動に便乗した宗教全体へのバッシングを許さない!〜
かつて右で問題視したのは、一水会だけだった!
穂刈純一郎君による「新・民族派経済学の探求」連載が絶好調の真っ最中であるが、どうしても無視するわけにはいかない騒動が勃発しているので、申し訳ないが今月号は横入りさせていただく。
その騒動とは言うまでもない。先の安倍元首相暗殺事件(将来は七・八事件と呼ばれるようになるのか?)の犯人、山上容疑者の犯行動機自白から始まった、一連の旧統一教会騒動再燃に便乗して主にネット上に蔓延り始めた、宗教そのものへのバッシングの動きである。
もちろん旧統一教会という教団が、極めて悪質な詐欺的反日邪教(「カルト」だの「セクト」だのといった曖昧な言葉を使うべきではない!)であることは全く異論の余地はない。マスコミは霊感商法の問題ばかり取り上げるが、それよりも「日本はかつて韓国を植民地支配した犯罪国家なのだから、贖罪のため、永遠に韓国に貢ぎ続けなければならない」とする反日教義のほうがはるかに問題であろう(しかもその例えに「日本はエヴァ国家だから、アダム国家である韓国に仕えなければならない」などという理屈を付け「合同結婚式」の名のもと、約七〇〇〇人もの日本人女性を韓国に連れ去ったのだから、女性差別という点からもその罪は重大だ)。
こんな教団と冷戦時代の保守派は、なんと「反共」というただ一点で結びつき、協力関係にあったというのだから悍ましい。その点を問題視し、冷戦時代から大っぴらに糾弾していたのが右では我が一水会だけだったというのも恐ろしい話だ(日本会議や神道政治連盟はその間、一体なにをしていたのだ?)
旧統一教会を糾弾すること、それ自体は左右関係なく全面的に正しい。自民党では今頃になって「問題ある教団との関係は見直す」などと言っているが、そんな生温い対応で許されるはずがない。
旧「統一教会」という教団が反社会勢力であるのは明らかなのだから「今後は関係を断つ」と口にするだけでは済まない。オウム真理教や法の華三法行に対しては出来たのだから、現行法下でも旧統一教会から宗教法人格を剥奪するのは不可能ではないはずだ。旧統一教会との関係によって自民党が喪った保守層(一般層もか?)からの信頼を回復させるには、最低でも旧統一教会系の勢力を完全に潰し、この国にいられなくする事。そして出来れば(難しいだろうが)旧統一教会がこれまで信者から巻き上げた献金や拉致した女性達も、少しでも奪い返すくらいの強硬策を取らなければならないであろう。
旧統一教会より悪い奴ら
しかし、である。
ここまで散々「信教の自由なんか糞くらえ!」とばかりに旧統一教会を叩いておいてなんだが、ネット上における同種の叩きの中には、明らかに政治的意図をもってその目的を歪めているもの、或いは純粋な義憤からの発言なのかもしれないが、宗教や政教分離にたいする基礎的な知識があまりにもお粗末過ぎるがゆえに、結果的にかえって日本の国益を損なう結果になりかねないような言説が溢れかえってしまっている現状は、それはそれで放置しておくわけにもいくまい(これもネットという匿名言論空間の悪しき要素の一つなのだろうが)。
そうした問題言論の種類は多岐にわたるが、ここでは幾つかのタイプに分類して反駁、あるいは問題点の指摘をしておきたい。
①自民党は旧統一教会の傀儡だ! その証拠に「憲法改正」「選択的夫婦別姓反対」等の自民党の主張は、旧統一教会の主張そのものだ!
これは左翼による典型的な因果関係のすり替えである。これらはむしろ、旧統一教会の方が日本の保守の主張に阿って掲げた主張であり、その逆では決してない。その証拠に冷戦が終了した(つまり「反共」の結束力が弱まった)キリスト歴の九〇年代以降、教会はそれまでの主張をあっさりとかなぐり捨て、北朝鮮に接近しているではないか! 第一、韓国では昔から儒教式「強制的」夫婦別姓であり、彼らが近代日本独特の「夫婦同姓」に内発的に拘る理由など、初めから全く存在しないのだ!
②「政教分離」を徹底しろ! 公明党のような中途半端な存在をこれまで放置してきたからこんな事になったんだ!
これは政教分離原則に対する基本的な無知の発言である。そもそもこの原則は「特定の宗教が国から特権を受け又政治上の権力を行使すること」を禁ずることにより信教の自由を実現させる為のものであって、個々の信者が、自らの宗教的理想に基づく目的を、民主的手続きを通して達成しようと図るのはなんの違反でもない。もしそれすらも「政教分離だ! 政治に宗教的価値観を持ち込むな!」といって禁ずるのであれば、それこそ思想統制となり、後述するような「旧統一教会どころではない」最悪の結果をこの国に齎すであろう。
③宗教法人が非課税なのはおかしい! 課税しろ!
これも宗教団体に対する典型的な無知からくる暴論である。そもそも旧統一教会のように無茶苦茶な暴利を貪っているのはごく一部の悪徳新興宗教だけで、地方の小さな寺社や、維持管理に莫大な費用の掛かる国宝や重要文化財等を抱えた寺社は、どこも経営が火の車になっているのが現状である。「『信』と『者』を並べれば『儲』。宗教は儲かる」なんてのは完全に根拠を欠いた与太話に過ぎないのだ。
こんな状況でもし宗教課税なんかしたらどうなるか。地域の寺社はことごとく潰れ、暴利を貪る新興宗教だけが税率が上がった分、さらなるお布施を信者に苛斂誅求して生き残るだけであろう。
ところが、ここまで言ってもなお一知半解の輩どもからの「いや、ここはこうすれば良い」式の無知な反論が後を絶たないのがネット言論の残念な現状なのである。 (この項続く)
【月刊レコンキスタ令和四年九月号掲載】