私と鈴木氏との思い出の一コマとして、もうだいぶ前の話になりますが、今から十年前の平成二十五年六月十五日(土)、福島の地にて(医療法人 生愛会グループ職員と福島市民を含めて)数百名の参加者による当法人の生愛会グループの教育文化公開シンポジウム「世相を斬る〜歴史・教育・国際情勢・経済〜」に、民族派の当時一水会 顧問 鈴木邦男先生と同代表 木村三浩先生の御両名をシンポジストとしてお迎えしました。

 それまでは、我々医療関係者が企画する研修会はどうしても医療に関してのテーマ、研修のみに偏りがちでした。そこで、当時、社会の様々な視点からのテーマを取り上げる機会をもっと多くして、幅のある教養を身に着けることを目的に、教養・文化のセミナーの一環として企画しました。ご存知のごとく、鈴木先生・木村先生は「朝まで生テレビ!」や「サンデープロジェクト」等のテレビ番組にご出演され、幅広い分野において執筆・取材・討論活動を行っておられているので両先生に教育や国際情勢などの幅広い視点から当時の世相を斬って頂き、参加者と共に考えるシンポジウムの開催となりました。

 そして当時シンポジウムは大きく二段に構成され「歴史・教育」「国際情勢・経済」について各シンポジストが持論を語りました。その中でも鈴木先生は、現行憲法の成り立ちについて論じました。憲法について改正した方が良いが、今の自民党の草案には矛盾もあり、このままでは従属憲法になり集団的自衛権の行使は米国の傭兵としての役割しかなくなってしまうと強く訴えました。特に私が印象に残ったのは「今の自民党の草案を見ていると愛国心を憲法で強制しようとしているのはおかしい。政治家というものは国民一人一人が安心してこの国に住んで、国民が国を愛せるように国創りをする義務がある。それを忘れて日の丸や君が代を国民に押し付ければ、日本は汚れた国になってしまう!」と持論を唱えたところでした。

 そこに市民の参加者からは、異口同音に「右翼のイメージが一八〇度変わった」「とても勉強になる良い機会であった」「定期的に今後も開催してもらいたい」等の数多くのご意見を頂き、当時の鈴木邦男氏の持論を聞いて鈴木邦男ファンが福島でも新たに出現したと当時の熱気を回想します。あれから十年たっても色あせることがなく、今だからこそ更にあの鈴木邦男流愛国心の捉え方が必要なのではないかと改めて痛感します。

 そして講演終了後に当病院(福島県福島市)から福島県会津若松の南二〇キロの所にある「大内宿」へご案内し江戸時代の下野街道の一宿場として栄え、昔の面影を今にとどめている街並みを散策され、名産のねぎそばを食べられ、その足で二時間ほど車を東に走らせ日本三大名所の三春の滝桜をお見せして、とても久しぶりの故郷に帰られたひと時を満喫されて、その後東京に戻られた。「言論の覚悟」と言う側面を持った男である邦男氏の満面の笑みを強烈に思い出されます。本当に長い間ご指導ありがとうございました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。