七年ぶりの国交回復が意味するもの

 令和五年三月十日、サウジアラビアとイランは中国の仲介を経て国交の正常化へと乗り出した。七年間断交しイエメンで代理戦争を繰り広げていた両国が関係の修復に乗り出したのは分断と紛争が続いていた中東において大きな変革の兆しとなった。

 なによりこれが意味するのは、中東における米国の影響力の更なる低下。令和三年のアフガニスタン撤退に始まった中東における米国ヘゲモニーの崩壊は着実に進んでおり、米国・イスラエル共に焦りを隠せない様子だ。

 サウジアラビアとイラン、この二つの大国が手を握ろうものなら「民主主義」という大義名分の下で米国によって行われていた中東の侵略と分割統治の時代もいよいよ終わりを迎えるであろうか。

 また、中東を混沌に落としたイラク侵略攻撃の日である三月二十日を目前にしての和解というのもなかなか皮肉なものである。

アジアの盟主を狙う中国

 さて、今回の国交回復を語る上で欠かせないのが中国の存在である。サウジアラビアとイランの国交回復において中国がキーマンとなったのは西側諸国にとって予想外の事態であった。

 更に習近平主席は三月二十日からロシアを訪問しており、ウクライナのゼレンスキー大統領とのオンライン会談も控えている事を踏まえている。これはサウジアラビア・イランと同様にロシア・ウクライナ間の仲介も務めようという動きに違いない。

 中国が米国に代わってアジア・ユーラシアの軸となるべく本格的に躍り出ている証であり、西側諸国のアジェンダに追従する以外の外交的思惟を持たない日本とは大きく姿勢の異なる所だ。

己の失敗と向き合わなければ進歩はない

 中国は自国が列強に分断・搾取された「国恥百年」、そして独自の経済圏を確立できず米国に踊らされて滅亡した戦前の日本の失敗から学び、国際社会においてその存在を確固たるものにしようと試みている。権威主義的な国政、近隣諸国への強硬姿勢、そして人道的な問題は決して褒められたものではないが、主権国家としての気概は学ぶべきところである。

 今、中東をはじめとしてアジアは大きく変化しようとしている。今回のサウジアラビアとイランの和解、およびそこにおける中国の関与は我々も深く注目すべきだ。

 今は勢いを見せているものの中華思想を基盤とした中国の華夷秩序的外交は米国の民主主義強要と本質的に変わりなく、内部的な動揺が起きるかもしれない。いずれにせよ、さまざまな状況に対置できるだけの日本を取り戻さなければならない。そのためには、戦後レジームからの脱却を遂行していかねばならないのだ。真の東洋王道を担える主体を作る事が必要である。それは維新変革への我々の使命である。

 その為にも我々は今、戦後の呪縛から抜け出し、対米自立を成し遂げ、一主権国家として外交が行える自主日本を作らなければならない。