岸田首相が、ウクライナを訪問した。5月開催のG7広島サミット議長国として、ウクライナ現地を訪れていないのでは説得力を欠くことから、インド訪問からの帰国の途上の予定変更であり、ゼレンスキー大統領との会談も行われた。だいたいインド訪問に夫人を伴っていないことから、察しは付いたのだが、米国の覇権再構築にぶら下がり、対米従属一辺倒の路線に突き進んでいっていることを証明してみせた。すでに「インド訪問のあとがチャンス」とみた岸田首相は、G7首脳で日本だけが訪問していない焦りからこの挙に出たものであろう。過去、幾度もウクライナ訪問を計画していたが、結局実現してこなかった。

 岸田首相の地元広島で5月に開催されるG7サミットに、ゼレンスキー氏を招く予定もあるという。欧米諸国と連携して対ロシア包囲網を完成させ、ウクライナ支援をアピールする思惑もあるだろう。

 だが、岸田首相がウクライナを訪問して、何の益があるのだろうか?

 既に岸田首相はインド太平洋地域で2030年までに総額9.8兆円の支援を約束。2月にはウクライナへの7370億円の追加支援を打ち出している。

 日本国内では物価の値上げが進行し、国民が困窮する中で、海外へは景気良い「ばら撒き」だ。

 これが世界平和への貢献となれば良いが、結局は対米追従、米国に良い顔をしたい「忠犬ポチ公外交」でしかないことは明白であろう。日本がいくら財政支援をしたところで、戦争が終わるはずはない。

欧米諸国の傭兵の賃金、兵器を購入する資金に充てがわれるだけだ。

 岸田首相のウクライナ訪問と時を同じくして、モスクワには習近平中国主席が訪問、プーチン大統領と会談し、ウクライナとの仲介に意欲を見せている。

 本来習近平氏の役割を岸田首相は果たすべきではなかっただろうか?

 中国には中国の思惑があるだろうが、「平和の使者」としては、岸田首相よりはるかに習近平氏の方が貢献している様に見えてしまう。

 5月のサミット開催地に広島が選ばれたのは、非核と世界平和を訴える場としてではなかったのか。

 世界平和に貢献しないばかりか、原爆を投下した米国に追従する岸田外交では、広島でサミットを開催する意義は全く見えない。原爆犠牲者に対する裏切りとさえ言える。

 日本はいかなる国なのか。単なる米国の犬に成り下がるのか。三島由紀夫烈士の予言「無機質な、からっぽな国」で良いはずはない。