劣化ウラン弾は「核兵器」ではない?

 泥沼化するウクライナの戦況だが、英国政府は主力戦車チャレンジャー2のウクライナへの供与を決定した。

 問題は、このチャレンジャー2の砲弾に劣化ウラン弾が含まれる事だ。

 劣化ウラン弾は米英のイラク侵略戦争(湾岸戦争、イラク戦争)や旧ユーゴスラビアへの攻撃(ボスニア内戦、コソボ紛争)でも使用され、現地の住民はおろか米兵にも多大な健康被害を及ぼした。
だが米英両国は劣化ウラン弾と住民の健康被害について「関連性はない」と否定。未だに責任を認めていない。

 今回のチャレンジャー2戦車への劣化ウラン弾配備に対し、ロシア・プーチン大統領は「核を成分とする兵器」と非難。対抗措置としてベラルーシへの戦術核配備を決定した。

 一方で英国防省は、「劣化ウラン弾は核兵器ではない」と主張。「英軍は数十年にわたり使用してきた。人体や環境への影響は低いとされている」と劣化ウラン弾の供与を正当化している。
日本におけるマスメディアの多くも、ベラルーシへの核配備を批判する一方で、劣化ウラン弾に関しては「核爆発する訳ではないから核兵器ではない」との認識であり、「放射性汚染における危険性も低い」と楽観視している。

 だがこれは欧米発のプロパガンダの「コピペ」に過ぎない。欧米からの情報をそのまま鵜呑みにして垂れ流すのでは、劣化ウランの危険性は伝わる事はないだろう。

国連機関UNEPが指摘した劣化ウラン弾の脅威

 昨年10月、国連機関であるUNEP(国際連合環境計画)がウクライナに関するレポート「The Environmental Impact of the Conflict in Ukraine: A Preliminary Review (ウクライナ紛争における環境への影響)」を発表している。

 その中に「Depleted uranium(劣化ウラン弾)」が取り上げられている。

 以下にその内容を引用する。

「劣化ウランは、天然に存在するウランを発電や兵器に使用される燃料に変換するために必要な濃縮プロセスの高密度副産物です。 天然に存在するウランと比較して放射性が約 40% 低く、放射性が低いと考えられています。 放射線の主な形態は、健康な人間の皮膚を透過しないアルファ線です。 ただし、吸入または摂取すると放射線障害を引き起こす可能性があります。

 劣化ウランは鉛よりも密度が高く、一部の軍需品では貫通力を高めたり、戦車の装甲として使用されてきました。 その使用は、湾岸戦争、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、セルビア、モンテネグロの両方で報告されています。

 ミサイル内の劣化ウランは、発火特性を持ち発火する衝撃で粉塵雲を形成し、吸入によって体内に入る劣化ウラン酸化物のエアロゾルを形成します。このようにして生成される粉塵の量は、目標によって異なり、装甲戦車やコンクリート壁などの硬い表面ではより多くの粉塵が生成されます。

 劣化ウランは、局地的な堆積物や土壌汚染を引き起こす可能性があり、水生種と陸生種の両方に影響を与える可能性があります。

 哺乳類ではウラン毒性は発達、脳化学、行動、および腎機能に非常に有害である可能性があり、 毒性のレベルは摂取量に大きく依存しますが、特に肝臓にとって危険です。 劣化ウランの化学毒性は、その放射能の影響の可能性よりも重要な問題と考えられています」

 UNEPはイラク、旧ユーゴで劣化ウラン弾の被害について現地調査を行っており、その危険性について以前より報告を示している。

 この報告通り、環境や人体への悪影響が懸念される以上、劣化ウラン弾の保有および使用は予防原則に基づき規制、禁止されるべきだろう。

 クラスター爆弾、対人地雷等、人道上問題とされる兵器に関しては国際条約で規制、禁止されている。劣化ウラン弾に関しても国際条約を設け、規制する必要がある。

 今年5月に広島で開催されるG7サミットで、岸田首相はロシアの核兵器の脅威を取り上げる予定だが、劣化ウラン弾の危険性も指摘し、「劣化ウラン弾規制・禁止国際条約」を提唱するべきではないだろうか?