第239回 一水会フォーラム 講演録

圧倒的ガリバー企業、電通とは?

 電通は、世界最大の広告会社です。日本に世界最大の広告会社がある事に驚かれるかもしれませんが、実は世界的には、会社は単体では数えず、グループで数えます。グループ別に見ると、電通グループとしては世界第六位です。二〇二一年度の売上高が約五兆二千億円で、いかに巨大かが分かります。

 日本国内の総広告費は、二〇二一年時点で六兆七千億円くらいで、まだ七兆円を超えたことはありません。日本における業界シェアは、電通自身は「二五%くらい」と言っていますが、実際には業界で四割くらいを占めていると考えられています。しかも、電通は上場した時に、会計基準を海外仕様にしてしまって、実態を分かりにくくしています。これは独占禁止法逃れではないか?とも言われています。

 そして、あらゆるスポーツイベントの実務を担っています。いま問題になっている東京オリンピックをはじめ、ワールドカップも、二〇二五年の大阪万博も、開催地に選ばれるかどうか未定ですが二〇三〇年の札幌オリンピックも、世界陸上、バスケット、ラグビー世界選手権も、全て電通が握っています。Jリーグは、以前は博報堂が担当していましたが、三、四年前から電通に変わりました。

 政治の世界では、電通は自民党との結び付きが強いことで知られています。数多くの代議士が、子弟を電通に縁故入社させています。電通と言えばコネ、通称「コネ通」と言われるほどで、常に社員の七割近くはコネで採用しています。政治家の子弟や、CMを打てるクラスのオーナー企業の子弟であれば、それだけで広告費が落ちてくるので、本人の資質は全く関係ないんです。

 一方、博報堂には、政治家系統の人はあまりいません。僕自身も長年博報堂にいましたが、そういう人間に会ったことはありません。

 メディアにニュースを配信する共同通信や時事通信も電通の株を持っています。そして電通は、ほとんどの民放テレビ局の株を持っています。つまり「持ち合い」という状態です。だから自分たちの相互批判は絶対にしません。ほとんどのメディアが電通を正面から批判しないのは、そういう背景があるからです。

 電通といえば、第四代社長の吉田秀雄氏が作った「鬼十則」が有名ですね。「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない」から始まる、十項の鉄則があるわけですが、よく知られているのが五項目の「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」という部分です。

 僕が知っている電通は、まさにこの鬼十則を徹底して死んでもやるという社員集団です。こうやって電通を批判していると、電通という会社をバカにしているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。

 僕は、電通は強大な力を持っていて、自己犠牲を厭わない、恐ろしい会社だと言っているわけです。

電通の変遷

 電通グループは七つの会社に分かれています。電通、電通国際情報サービス、電通デジタルなどの七社を総称して「電通」と言います。

 もともとは、一九〇一年に日本広告という名前で設立されました。その後、一九〇七年に広告から通信にも手を広げて日本電報通信社となり、一九三二年に日本新聞聯合社と合併します。満州国では満州国通信社を設立しています。そして一九三六年に、日本電報通信社は広告代理専業となりました。広告専業といっても国策会社なので、戦争に協力して色んなことをやっていました。

 戦後は、満州国から引き上げてきた満鉄の帰国者たちを、電通は大量に雇いました。満鉄の第一線で働いていた優秀な人達を吸収して、力にしていたとも言われています。そして一九五五年、吉田秀雄氏が社長を務めていた時に社名を電通に改め、今に至ります。

 ちなみに博報堂の歴史はもう少し古く、一八九〇年代から新聞広告や雑誌広告をメインに事業を行っていました。

 電通は、自社の組織図を公表していません。徹底した秘密主義です。

 実は、電通や博報堂がここまで巨大になれたのは、海外の広告会社が絶対にやっていないことをやっているからです。海外の広告会社は「一業種一社」と決まっています。例えば、車でベンツを担当している会社はBMWは担当できませんし、精密機械の分野で言えば、ソニーを担当していたらキヤノンは担当できない。ところが日本はこれができるんです。だから電通も博報堂も、複数の自動車会社の広告を担当しています。あらゆる業種のあらゆる仕事をしているので、あれだけ巨大な会社になれるわけです。

 海外の広告業界は秘密保持が厳格なので、「一業種一社」しか認めていません。日本の会社が秘密保持にうるさくなってきたのは、一九九〇年代の後半くらいからです。僕が博報堂にいた時代は、同じフロアで同業種の広告の営業部が仕事をしているような、のどかな時代でした。

 そして現在は、電通も博報堂も、ひとつのビルの中で社員は仕事をしていますが、自動車会社を担当する営業部によって、この階はトヨタ、この階はホンダ、この階は日産、というようにフロアもエレベーターも分けています。IDカードは自分の担当している階にしか行けないようになっています。

ナンバーワン企業「電通」

 電通は自分達のことを、「日本の広告費における売上高比率二四・四%でシェアナンバーワン(一八年)」と言っていましたが、僕の肌感覚的には、実際はその倍くらいのシェアだろうと思います。

 中でも特徴的なのが、テレビにおけるシェアが三六・五%あるということです。これはどういう意味かと言うと、例えばあるテレビ局のゴールデンタイムに三十秒のCMが十本流れるとしたら、電通を通して流れるものの割合が三六・五%あるということです。つまり四割、十本中の四本は必ず電通を通して放送され、残りの六割を他の広告会社がやっているという意味です。

 つまり自分たちが確保している枠に、恣意的にCMを流すことも可能だということです。ですから、憲法改正の国民投票に向けて、改憲派のCMをゴールデンタイムの一番いい時間に流して、護憲派のCMは視聴率の低い深夜にしか流さないというようなことも、やろうと思えばできるんです。

 ある会社が作ったグラフによると、電通のシェアは三八%で約四割を占めて一位、博報堂は二四%で業界二位です。そして長い間、アサツーディ・ケイが業界三位でしたが、金額だけで言えば、いま日本で三位の広告会社はサイバーエージェントです。サイバーエージェントはネット系の広告しか扱っていないので、総合広告代理店ではないのですが、金額だけはアサツーディ・ケイを抜いているという面白い現象が今、起きています。

 日本で一番大きなメディアグループはフジテレビですが、売り上げ高は六千四百億円くらいしかありません。次に日テレ、サイバーエージェントと続いて、日本の新聞業界で一番売り上げが多いのは朝日新聞で三千七百五十億円です。つまり、朝日と電通の売り上げ高を比べると十倍以上の差がある。電通という存在がそれほど巨大だということです。

 電通と博報堂の収益構造は、よく似ていて、テレビCMの収入が三割以上を占めています。日本に民放のテレビ局が開局してから五十年以上の歴史がありますが、日本人はまだまだテレビに依存していますから、テレビCMの広告費が大きな収入源です。

 例えば、十五秒のCMをゴールデンタイムに流して一本が五百万円だとすると、電通と博報堂にはその二割、百万円入ってくるので非常に高収益です。

 インターネット広告は、総額ではテレビ広告を抜いていますが、実は利益率が低く、テレビほど儲かりません。電通と博報堂で一番大きく違うのは、電通にはコンテンツサービスの売り上げが全体の九%あります。これは五輪などのイベントの事で、博報堂にはほとんどありません。

 テレビに頼っている収益構造は今後どう変わっていくのかというと、もちろんインターネット広告にスイッチしていくわけですが、力の入れ方によって、だいぶ変わってきます。

 持続化給付金問題の時に皆さんも驚かれたと思いますが、経産省の間に電通が入って、九割近くを中抜きしていたわけですね。その時に色んな新聞社が僕のところに、「電通は広告会社ではないのか、なんでこんなことをやっているのか」と聞きにきました。

 実は二〇二〇年に、電通の当時の取締役副社長執行役員で現在の社長である榑谷典洋さんは、「我々はもはや、広告会社であろうと思っていない」と表明しています。広告だけやっていたら成長しない。電通は「総合ビジネス・ソリューション」企業だと言ったんです。

 だから、一般社団法人サービスデザイン推進協議会という団体まで作って、経産省が持続化給付金を一刻も早く国民に配りたいと思ったら、電通がきちんと対応できるようになっていたのです。

 何年か先に儲かることを見越して投資することができるのが電通、できないのが博報堂です。博報堂の場合は、単年度で儲かるかどうかを考えるので、短期で回収できる見込みがあればやるが、見込めないならばやりません。

 博報堂は、持続化給付金のようなことはやらないのかとメディアに聞かれた時に、「うちは広告会社だからやらない」と社長が答えていました。

電通と自民党の関わり

 電通と自民党の関わりは諸説あり、田原総一朗さんが書いた『電通』という本の中では、一九五二年の総選挙で吉田茂の自由党が勝つために電通を使って広告をたくさん打った時からの付き合いであるとされています。

 一九六〇年の安保闘争で樺美智子さんが亡くなりましたが、その数日後には在京新聞七社が共同で、

 「議会政治を守れ」と社告を打ちました。これを作ったのが朝日新聞社と電通だと言われています。

 その時期から、電通は全ての新聞社に対して力を持っていたんです。電通は一九七二年に、自民党及び政府関係機関の業務を行う「第9連絡局(のちに第9営業局)」を設立しています。自民党の仕事をやるためだけに営業局をひとつ作ってしまったんです。博報堂にはそのような局はありません。

 電通の仕事で有名なのは、二〇〇一年の小泉内閣で「改革なくして成長なし」というワンフレーズ・ポリティックスや、「自民党をぶっ壊す」などのフレーズです。一言でみんなが飛びついてくるような言葉を、電通がコピーワークしています。

 電通出身の政治家もたくさんいます。主な自民党の政治家としては、伊藤忠彦(衆院議員)、行田邦子(元参院議員)、高村正大(衆院議員)、塚原俊平(元衆院議員)、中山泰秀(衆院議員)、並河健(天理市長)、平井卓也(衆院議員・元デジタル改革相)など、様々な顔ぶれが揃っています。政治家ではありませんが、安倍昭恵夫人が電通出身なのは有名な話ですね。

 二〇一五年に、電通の社員だった高橋まつりさんの過労自殺がありました。彼女は東大を卒業して電通に入り、十月に本採用になると、優秀だったために、いきなり最前線で働かされて徹夜の毎日で鬱病になり、わずか三ヶ月ほどで自殺してしまいました。これは電通を揺るがす大事件になって、当時の社長のクビが飛びました。

 一九九一年にも、入社二年目の男性社員が過労自殺しています。その時に電通は、「社風を変えます」と言ったんですが、鬼十則が正しいと言っているんだから変わるはずがないです。

 二〇一三年六月に三十代の男性社員が過労死、二〇一四年六月には関西支社が違法残業で是正勧告を受け、二〇一五年八月には東京本社でも是正勧告を受けていますが、電通は改革しようなんて全く思っていません。

 僕は電通社内にも友人がたくさんいて、色々な情報を聞いています。高橋まつりさんの事件が起きて電通の上層部の意識は変わったのかと聞くと、「変わるわけがないだろう」と。でも、あまり厳しくし過ぎると兵隊が誰もいなくなってしまうので、それなりに対策はするようですが、基本的な精神が変わらないから、今回の東京オリンピックの騒ぎが起きるわけです。

「電通依存」とは何か?

 日本は今、国を挙げて電通に依存しています。例えば原発関係で言えば、環境省では福島の原発事故からの復興事業の一環で作った「除染情報プラザ」の業務を、全て電通に丸投げしていました。

 福島原発の汚染水の海洋放出の問題も、電通にとっては特需案件です。福島県が「汚染水の海洋放出反対」を表明すると、国は「風評対策をする」と言っています。つまりは風評が立たないように、それを上回る莫大なカネをかけて広告を打つとか、メディアを抱き込んで汚染水は問題ないと言わせる、というようなことです。

 持続化給付金事業では、経産省が七九六億円で一括発注したサービスデザイン推進協議会が、電通に七四九億円で再委託させ、電通は六四五億円でさらに外注するわけですが、その外注先は電通の子会社です。

 さらに経産省のマイナポイント事業では、「環境共創イニシアチブ」という団体が受注して、電通は矢面に立たずに姿が見えないようになっているものの、きちんと再委託を受けているわけです。

 東京五輪にしても、組織委員会は実質、電通が動かしていました。組織委員会のスタッフは、最も多い時で七、八千人くらいになっていましたが、その半分以上は東京都から出向していました。電通からは、多い時で二百人くらいが入っていました。人数では東京都の職員が多かったものの、スポンサーとの契約業務などは実務経験がないとできないので、電通の人間が全てやっていたわけです。

 なぜ官庁や大企業は電通に依存するのか?官庁関係者に取材すると、みんな同じ回答が返ってきます。電通に依頼すれば、可もなく不可もなくやってもらえるからです。

 自分たちが使っているお金は全部税金だから、無駄にできないし失敗できない。

 もし事故や問題が起きても、電通なら最後まで後始末もやってもらえる。お金も電通に立て替えてもらい、全てが終わってからの支払いで済む。決まった予算内であれば電通にいくら中抜きされても関係ないわけです。

 そのおかげで電通は、国策や政治に関与しすぎています。原発広告、原発事故後の復興PR、自民党の広報、選挙広告、持続化給付金などの国家事業、東京五輪に代表される国家的イベント、さらに、憲法改正国民投票では改憲派の宣伝を担当するでしょうし、防衛省の世論誘導にも関与する可能性があります。

電通と自民党の仕事例

 二〇一六年にオバマ大統領が広島を訪問しました。その年の参院選で、自民党は選挙CMで安倍晋三さんとオバマが写っている写真を使いたいということで絵コンテを見せたところ、全てのテレビ局から拒否されました。

 オバマは日本政府が呼んだから来たのであって、自民党が呼んだわけではない。つまり、そのまま流したら選挙違反になるからです。でも、そんなことは電通は当然知っていて「それでも流したい」と押す。フジテレビが拒否したら、電通は弁護士まで連れて来てゴリ押ししました。しかし、その時はテレビ全局がスクラムを組んで拒否して、安倍・オバマ案は流れました。

 それでも電通は懲りずに、次に安倍さん一人のCMを作りました。そのCMは、有効求人倍率の数字が正しくないとか、雇用が一一〇万人増えたと言っているけどパートや非正規が増えただけであるとか、問題がたくさんありました。

 この時も実は、民放は「流せない」と断ったんですが、電通は、日テレには「フジが流すと言っているのに日テレは流さなくてもいいんですか」というように個別撃破をかけました。結局、民放は総崩れになって、問題のCMは流れてしまったんです。こういうことを、電通は平気でやります。

 翌年二〇一七年の衆院選でも、似たようなCMをそのまま流してしまいました。選挙広告は全て、電通が作っているわけです。自民党は民放テレビ局に圧力をかけ、各局はCMのお金がほしいわけで、営業案件なので最終的にはオッケーを出してしまいます。

 二〇一九年には、衆議院議員の甘利明さんが中心になって、自民党に若い世代を取り込もうということで、「#自民党2019」「新時代の幕開け」という広告を作って、渋谷のスクランブル交差点や六本木でPR映像を流していました。「新時代の幕開け」という広告の絵は、漫画「スラムダンク」の作者として有名な井上雄彦さんが描いています。「新時代」と題したCMは、噺家の卵やモトクロスの選手など、すでに活躍している十代の子供達を起用し、安倍晋三さんと一緒ににっこり笑っているという映像です。

 安倍政権の功罪は色々とありますが、特に十代の子供達の中には、自分が生まれてから知っている首相は安倍晋三しかいないという子もいます。その子達にとっては、安倍さんは優しいおじさんに見えるわけです。そのイメージをCMで増幅して、さらにまた自民党に票を入れてくれればいいという考えがあったのでしょう。

電通、まさかの失墜

 東京五輪・パラ組織委員会の高橋治之さんが逮捕され、電通はオリンピックのイメージを完全にぶち壊しました。

 これは良いことだったと僕は思っています。なぜこんな事件が起きたのかというと、全部電通に任せていたからです。つまり競争原理も監視も働かず、電通がやりたいようにやっていたから、このような問題が起きたのです。

 二〇二二年十一月に入ってからは、高橋ルートだけではなく、談合ルートまで出てきました。発注者である組織委員会にも電通の出向者がいるわけですから、価格も何もかも全部筒抜けに決まっています。筒抜けでやったおかげで、どんな不具合が出てきたかと言うと、見積もりが非常に高くなったんです。正当な価格の三〇%以上、中には三〇〇%以上も見積もりが高くなったものもある。そしてそれが通ってしまうんです。

 お金が足りなくなったら税金を投入する、つまり単に広告会社がお金を持って行ったということではなくて、システムとして税金を吸い上げていたということです。これは非常に大きな問題で、これからもまだまだ出てくると聞いています。

 実は、検察が狙っているのは高橋さんではなく電通本体だと言われています。電通があまりにも好き勝手にやりすぎているので、企業としての電通に責任を取らせたいという思惑が、検察にはあると聞いています。

 もしも談合ルートで電通社内の担当者に逮捕者が出れば、当然、電通社長の責任も問われます。そして会社としては、官庁関係の仕事の発注が一定期間できなくなります。

 今日お話したようなことは、テレビなどではほとんど語られません。例えば高橋さんが逮捕されたというような事実の報道はします。しかし、事件の背景の解説は誰もしない。コメンテーターが電通の悪口など絶対に言いません。それは、電通の悪口を言った途端、すぐに外されるからです。

 当然、テレビ局も電通の問題についての話はなるべくしたくないし、巨額の広告費が報道を歪める可能性について、なんてテレビ局自ら語りたくありませんよね。

 事実上、電通はメディア各社の生殺与奪を握る、絶大な「第五の権力」になっています。電通の体質自体は大して変わっていないのに、電通本体はバブルの頃に比べて十倍くらい大きくなっています。そして動く金額も巨大になりすぎてしまって、誰も文句をつけられないのが現状です。

 昨年、テレビ朝日の朝の情報番組で、コメンテーターの玉川徹さんが安倍元首相の国葬について、菅元首相の弔辞の演出に「電通が入っている」と発言して問題になりました。

 玉川さんは、翌日にはすぐに「間違いだった」と訂正して謝罪しました。普通であればそれで終わりのはずなのに、なぜ十日間の謹慎処分になったのか。しかも現在もまだコメンテーターの仕事を外されて、現場の取材担当になっています。

 今は電通がテレビ局に圧力をかけるよりも、メディア側が勝手に忖度するわけです。それは、メディアのトップの人達は六十代、七十代で、昔の電通の力を知っている世代だからです。電通に何かやられたら嫌だという人達がメディアのトップにいる。

 この件でテレ朝の社長が電通に電話謝罪したという記事も出ましたが、非常に分かりやすい例ですね。

 このまま電通を野放しにしておいて良いのでしょうか。僕は、非常に危険だと思っています。電通は極論的に言えば、反社会的な会社です。偉そうな顔をして税金をかっぱらって、社員は千五百万くらいの年収があるわけで、そんな事が許されるわけがないでしょう。

 「第五の権力」と言われるほど、今の日本の忖度社会の中で、電通の力が一番大きくなっているのが現在です。

 ディアの力が相対的に弱くなって、電通と戦う勢力がいないせいで、電通が好き勝手やっていたせいで、東京五輪の事件が起きてしまったわけです。

 今日お話したことを踏まえて僕が提言したいのは、五輪疑獄事件を契機に、電通の寡占状況を徹底追及し、電通分割の必要性を国会で議論すべきである、ということです。僕は十年以上前から電通の問題を追求してきましたが、今、ようやくその時期がきたのではないかと思います。(了)

【講師プロフィール】
本間 龍(ほんま・りゅう)
1962年、東京まれ。1989年に博報堂に入社。約18年間、営業を担当する。2006年に退職後、在職中に発生した損金補填にまつわる詐欺容疑で逮捕・起訴され、栃木県の黒羽刑務所に1年間服役。出所後、その体験をつづった『「懲役」を知っていますか?』(学習研究社)で作家デビュー。東京電力福島第一原発事故を機に、博報堂時代の経験から、原発安全神話を作った広告を調査し原発推進勢力とメディアの癒着を追及。また、憲法改正国民投票や東京オリンピックなど、様々な角度から大手広告代理店のメディアへの影響力の実態を発信するなど、幅広く活動中。