アフリカを皮切りに世界各地へ

 八月末にTICAD(アフリカ開発会議)に参加のためチュニジアに行った後、イスタンブール、ガーナ、ロンドン、サンセバスチャン、ニューヨークと久しぶりに世界を見た。

 ガーナでは、首都アクラの土地をすべて所有するアクラの王様に会った。今は、無料で土地を民間にリースしているそうだが、次の更新時からは有料にするという。王様は一気に大金持ちになること請け合いだ。

 アクラの王様はアクラ圏の観光振興を図りたいということで引き合わされた。第二次安倍政権で外国人旅行者を二〇一一年の約六百万人から、二〇一九年の約三二〇〇万人まで五倍以上に増加させたノウハウの一部を披露したのだが、それが現地の新聞で報道された。日本政府の観光アドバイザーが王様を訪問というタイトルだった。

 サンセバスチャンでは、現地に二つあるミシュラン三ツ星レストランのアルサックとアケラレのいずれも訪問した。

 アルサックでは、すっかり老けてしまったファンマリ・アルサックに会った。もう一〇回以上会っているのだが、私のことはもうわからないようだった。娘のエレーナがしっかりと跡を継いでいるのでお店は問題ない。アケラレでは、ペドロ・スビハナの娘のオイハナが、新しくできたアケラレ・ホテルを案内してくれた。モダンで洗練されたホテルだった。

 久々のニューヨークでは、インフレと円安を実感した。

 まずは出発前のホテル予約時に、ホテルの円建て料金がコロナ前の倍になっていることに驚いた。コロナ前、五番街のペニンシュラによく泊まっていた。トランプタワーの斜向かいだ。当時、アメックスで予約すると一番安い部屋は一泊七万円で予約できたが、今回調べてみると二〇万円。予算超過のため宿泊は断念し、今回はヒルトンに泊まった。以前は三万円程度だったヒルトンも一泊六万円。室内の冷蔵庫や湯沸かしポットは撤去され、ティーバッグもインスタントコーヒーもなかった。さらに、質量ともに貧弱な朝食が日本円で六千円以上。日本が天国に思えた。海外旅行者がこぞって日本に来たがるのも、うなずける。

続いて東南アジアへ

 帰国後しばらくして、今度はバンコク・マニラに行った。

 欧米・アフリカではマスクをしている人はまずいなかった。イギリスが一番緩く、スペインは機内や薬局ではマスクが義務だったが、屋内でもマスク不要だった。また、特にイギリスは現金を使うところがなかった。クレジットカードかICカード、電子マネーでの支払いが主流だ。電車に乗るためのオイスターカード(日本のパスモみたいなカード)へのチャージ(現地ではトップアップと言う)も現金ではできなかった。英ポンドの現金を持っていっていたのだが、使う局面がなかった。使えない現金は持っていても仕方ないので、円安に乗じて円に両替するしかない。

 一方でアジアは事情が異なっている。

 バンコク、マニラではほぼ全員がマスクを着用し、現金が普通に流通している。バンコクのスワンナプール空港から街中への電車のエアポート・リンク・レールの券売機は現金しか使えなかった。ただ、電車ではディスタンスを取る感じはなく、座席にはびっちりと座っていた。

 また、バンコクやマニラでは、インフレをそれほど実感しなかった。日本も色々なものが値上げされているが、アメリカのインフレに比べると可愛いものだ。

 久々に世界を周り、世の中の変化を感じることができた出張だった。

筆者プロフィール

石井 至(いしい・いたる)
昭和四十年、北海道生まれ。東京大学医学部卒。フランス系のインドスエズ銀行を経て、平成九年に石井兄弟社設立。同社代表取締役。金融ハイテク技術コンサルタントを行う他、東京にて幼児教室「アンテナ・プレスクール」を主宰。