【『紙の爆弾』2023年3月号掲載】
「バイデン大統領の犬」を極める岸田首相
日米の軍事一体化は、もはやとどまるところを知らない。沖縄では米国政府が駐留する海兵隊を令和7(2025)年度までに改編し、離島を拠点とする「海兵沿岸連隊(MLR)」として展開。それに呼応して日本の陸上自衛隊は沖縄の防衛・警備を担当する第十五旅団を師団に格上げし、ミサイル部隊を配備することを決めた。
日本政府は「中国の脅威」に対応するというが、米国が在日米軍を再編成するのは、彼らの対中戦略の一環である。そのために、在日米軍を自由に配置し、沖縄の危機をますます高めている。ある土地に家屋が立っている。その庭を借りている者が、庭を広くしたいと、家主の意向を聞かずに母屋の一部を壊す。そんなことがなぜ許されるのか。
言うまでもなく日本は地理的に中国とも台湾とも近い。アジアで有事が起きる可能性があり、それが日本人の生命・財産に関わる危機だというのならば、日本政府が独自に政治判断をして、外交によって諸問題を解決していくのが筋ではないか。しかし、対米従属の度合いをますます深めるのみ。
もちろんこれは、今に始まったことではない。しかし、岸田文雄政権において、米ポチぶりが目に見えて加速している。
1月の日米首脳会談では「両政府が一致」といった報道がみられるが、実際には米国政府が日本政府の頭越しでものごとを決定し、日本はそれに付き従うのみだ。
会談の場では岸田首相はバイデン大統領に差し指されて、お説を拝聴していた。本誌前号では、バイデン大統領が岸田首相の肩に手を置き上から語りかける、昨年の国連総会での象徴的なワンカットを掲載したが、今回の首脳会談でもまったく同じシーンが見られた(写真)。「フミオ、お前の首はいつでも守ってやるからな」とでも言っているようだ。
米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官は、中国・習近平国家主席の3期目の任期が終わる令和9(2027)年までに台湾有事が勃発するとの不埒な“予想”を何度も繰り返している。その前年を念頭に、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は1月9日、「次の大戦の最初の戦い」とする、中国が台湾を侵攻した想定のシミュレーション結果をまとめた報告書を発表した。
自民党は米国の戦略に自ら巻き込まれていくかのように、萩生田光一政調会長が昨年12月に台湾を訪れ、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事であるという安倍晋三元首相の言葉の正しさを、中国自身が行動によって証明した」などと語った。日本と台湾の間には、米国が結んでいるような関係法はない。
米軍の完全指揮下に入った自衛隊
さらに、1月12日の「2プラス2」(外務・防衛閣僚会議)では、日米安保条約で米国の防衛義務を定めた第五条を、宇宙空間での攻撃にも適用することを確認したという。日米安保はそれまで、極東の一地域に限られていたのが拡大し、ついに宇宙まで届いた。
さらに、ハワイにある米インド太平洋軍の司令部に置かれている、在日米軍の統合運用の指揮権を、東京・横田基地の在日米軍司令部に付与する案が浮上しているという。自衛隊が令和九年に常設する「統合司令部」と連携する再編案であり、自衛隊は米軍の完全指揮下に入る。「自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終わる」との三島烈士の予言が的中した形だ。
昨年末に閣議決定された「安保3文書」改定の危険は、すでに本誌でもたびたび指摘してきた。現在の流れを決定づけたのは、安倍晋三政権における集団的自衛権行使容認をはじめとした安保法制である。
当初、安倍氏は自衛隊を憲法に認められた存在にすると言っていた。しかし、実際に行なったのは、憲法論議を回避したうえ、自衛隊を米軍の下請け部隊として、世界中に派遣できるようにすることだった。
もし「国軍化」を目指すなら、国会での決議が必要だ。その際には前提として、国軍によって日本の何を守るかといった議論も行なわれるべきだろう。安倍氏はそれらを全てすっ飛ばした。この卑怯なやり口が定着したことで、岸田政権の下で、日米軍事一体化が進んでいるのである。
同時に行なわれているのが「中ロの脅威」煽動だ。防衛省はロシア・ウクライナ問題を引き合いにしつつ、自衛隊を海外派兵させる際に正当性を問われることがないよう、国内に向けた情報統制を着々と進めている。今後は電通が委託機関として、そのノウハウを駆使していくことになるだろう。いや、すでに始まっているとみるべきだ。
この間、萩生田氏が首相の防衛増税論に「増税を決めるということであれば、『国民の信』を問うことをお約束しないといけない」などと、いかにもまともなことを言っていた。自らの旧統一教会との関係への批判の矛先を避ける狙いが透けている。甘利明前幹事長も、少子化問題で消費増税に言及、岸田首相を牽制してみせた。
支持率の底が抜けた岸田首相に対し、自民党の中の不満が溜まっているのは事実だろう。日本のあちらこちらで、ガス抜きとアリバイと誤魔化しと自己正当化が横行している。さらに、国民分断工作にも注意が必要だ。
いま議論すべき本質的な問題とは、日本が独自で自分たちの主権と民族自決を確保することだ。米国に飲み込まれようとしていることに、疑問を呈する声が潰されている。
【2023年2月7日発売の『紙の爆弾』3月号にて全文を掲載しています】