2月24日、ロシアのウクライナに対する特別軍事行動から1年となるのを期に、岸田文雄首相がウクライナ訪問を検討しているという。5月の広島サミットの下準備を円滑に進めるため、現地訪問を考えているのだろう。同サミットのテーマは「ウクライナ問題」であり、G7首脳と歩調を合わせ、ロシア非難とウクライナ支援をぶち上げるつもりなのだ。
ウクライナでの戦闘状態は長期化し、民間人に多大な犠牲が出ている。欧米諸国はロシアを破綻させたいがためにウクライナに軍事援助を行なっており、終結の見通しが立たず、ますます泥沼の様相を呈している。
ウクライナ情勢に関しては、一日も早い「停戦」が望ましい。だが岸田氏の念頭にその様な構想はない。自分の選挙区である広島でのサミットを、なんとしても成功させたいというレガシー作りに奔走しているのだ。しかも米国のバイデン大統領が原爆資料館の訪れに合意したとの報道もあるが、まず米国政府からの謝罪を引き出すのが先決である。ただの物見遊山で行っても意味がないのだ。
一方、岸田首相がウクライナを訪問するならば、本人に渡航禁止措置がロシア政府から敷かれているが、外交ルートを通じて趣旨を明確にし、あくまでロシア渡航をも打診すべきである。停戦和平案を仲介する器量を示すべきなのだ。
ウクライナを訪問したその足でロシアにも出向き、プーチン大統領に会談を求め、ゼレンスキー大統領との和平のテーブルを作らせるよう、交渉するべきではないか。そんな構想も頭に浮かばないのであれば、岸田氏のウクライナ訪問は全く意味がない。
平和を実現する覚悟がないのなら、ウクライナ訪問には対米ご機嫌取りの意味しかない。
日本の首相は、「米意(アメごころ)」を斥け、あくまで日本人の公正・公平・正義を基調とする発想で世界情勢に取り組むべきではないか。