聞き手:作家・上條 影虎

ロシアとウクライナ問題の真実

 ロシアとウクライナの「戦争勃発」から二月下旬で一年を迎える。日本の報道を見ていると、一方的にロシアが悪いという論調が目立つ。本当にその報道が正しいのか?戦争というのは双方に言い分がある。一方的に正義と悪を決めつけるには、あまりにも情報が少なすぎる。

 今回は、ロシア事情に詳しい鈴木宗男参議院議員に、この事態の経緯、背景などを読み解いてもらい、それに伴う今後の日本への影響、また北方領土問題の行方を伺った。

上條:今、日本のメディアでは「ロシアが一方的に悪い」という報道ばかりです。これは公平性に欠けていて、正しい報道の形とは思えません。鈴木宗男先生はロシア政府とも親交があり、内情にお詳しいと思います。ロシアが戦争に踏み切った経緯や、なぜ戦争を止められなかったのか?ロシアの立場についてお聞きしたいと思います。

鈴木:まず初めに言っておきますが、私はこれまでもロシアの友人であり、これからもロシアの友人であり続けます。戦争や紛争には双方に言い分があります。先の大東亜戦争にも日本の言い分があったのと同じです。

 今回のロシアの軍事行動に対して、一方的にロシアが悪い、ウクライナが正しいという見方は公平ではない。昨年の二月二四日、ロシアが特別軍事行動を起こしました。なぜそういう行動をしなければいけなかったのか?ロシアにはロシアの言い分があります。

上條:鈴木先生のおっしゃる通りだと思います。大東亜戦争もアメリカによる経済制裁や圧力によって、日本が戦争に踏み切らざるをえなかった経緯がありますから。

鈴木:今回の戦争の発端は、一昨年の一〇月二三日、ウクライナのゼレンスキー大統領が、親ロシアの地域に自爆ドローン攻撃を行った事です。
 これに対してプーチン大統領は「ロシア国民が殺される」という危機感から、ロシア軍を国境付近に派遣しました。するとアメリカのバイデン大統領は、「ロシアが攻めて来るぞ」と煽ったのです。本来であれば「紛争はダメだ」と言って仲裁するのが普通なんです。
 そして昨年の二月一九日、ミュンヘンにおけるヨーロッパ安全保障会議で、ゼレンスキー大統領は「ブダペスト覚書」の見直しを提案しました。
 ソビエトが崩壊してロシアになった時、ロシアの核兵器はウクライナにありました。しかしウクライナは核兵器を管理できないので、ドイツやフランスなどと話し合い、ソ連の継承国はロシアであり核兵器をロシアが引き取ると決めたんです。この時に署名したのが「ブダペスト覚書」です。見直すという事は、「ウクライナに核兵器を持たせろ」という事です。これにプーチン大統領が怒ったのです。それで昨年の二月二四日、特別軍事行動が始まったのです。

上條:ウクライナ側が仕掛けてきたという事ですね。

鈴木:そうです。ゼレンスキー大統領が、自爆ドローン攻撃や核を戻せなどと演説をした事で、ロシアが危機感を持ってしまったのです。
 しかし、西側の巧みなプロパガンダで「ロシアが悪い」という一方的な情報が流されてしまいました。
 私たちが子供の頃、学校で喧嘩をした時に先生は「先に手を出した方が悪い、合わせてそのもとを作った者にも責任がある」と喧嘩になった経緯を双方から聞き、最終的には喧嘩両成敗と教えられました。
 現にウクライナはドローン攻撃をし、核を戻せと言ったことで紛争になりました。ウクライナの側にも、責任はあるのではないでしょうか?

上條:大東亜戦争と今回の戦争は似ていますか?

鈴木:よく似ています。先の戦争では欧米列強が日本封じ込めに入りました。特にエネルギーの問題、米・英・オランダが対日石油輸出を全面的に禁止したために、日本は戦争に打って出るしかなかったんです。
 ですから今回も、ゼレンスキー大統領には非が無く、自国民を守るために動いたロシアのみに非があるというのは、公平ではないと私は思います。
 アメリカによるユーゴスラビア、イラク、リビアでの空爆、アフガン侵攻、全て国際法違反ですよ!アメリカがやった国際法違反はお咎めなしで、ロシアがやった事は非難する。これは正しいですか?冷静に考えなければいけないですよ。

上條:鈴木先生は、この「戦争」は今後、どのように推移すると思われますか?

鈴木:私は停戦しかないと考えています。戦争で犠牲になるのは子供、女性、年寄りです。みんな世界でたった一つの命なのですよ。それをゼレンスキー大統領は演説で、女性に銃を取れと言っている。とても良いリーダーとは思いません。ゼレンスキー大統領が英雄視されること自体、私は違和感をおぼえています。

上條:日本政府は、何をするべきでしょうか?

鈴木:日本は今年のG7の議長国です。日本はウクライナに武器供与はしていません。だから「停戦」、話し合いを提案できるのです。議長国の立場を活かし、停戦に向けての話し合いの場を作るべきです。

上條:なぜ停戦の話が出てこないのでしょうか?

鈴木:アメリカの思惑が大きく影響しています。アメリカは戦争を長引かせてロシアの弱体化を狙っているのです。ロシアの力や影響力を弱めるのが一番の狙いでしょう。

上條:今後もまだ戦闘が続いていくという事ですか?

鈴木:そうです。どう考えても、ウクライナがロシアにまともに勝てる訳がない。私が照ノ富士と勝負するくらい難しいです。(笑)力の差は歴然なんですよ。

上條:はははは……なるほど。

鈴木:アメリカがどんどん武器を提供し、金も出す。だから戦争は長引いていくんです。そしてアメリカの軍需産業は儲かります。アメリカばかりが得をする、そんなバカな戦争を続けたらダメですよ。ドイツやフランスは早く戦争を終わらせたいと考えています。だから今年のG7で、議長である日本がドイツやフランスに働きかけるべきです。そしてサミットが行われるのは広島ですから、被爆国の日本が戦争の悲惨さを伝えないといけない。

上條:一方で、ロシアが劣勢だという報道も出ていますね?

鈴木:これは西側のプロバガンダでしょう。ロシアはもうミサイルがない、兵器が古いと、ネガティブな報道ばかりです。しかし実際は、ロシアは超音速ミサイルを開発するなどして、力を温存しています。つまり、遠慮しながら戦争をしているんですよ。
 一方、アメリカの戦争は遠慮しません。イラクを見てもそうです。攻撃はメチャクチャになるまでやります。ユーゴの時でも無差別に攻撃し、民間人が数多く犠牲になりました。しかしロシアはピンポイントで、だから犠牲者が少ないでしょう。ここにはプーチン大統領の配慮があります。民間人をできるだけ巻き込まないようにしているんです。

上條:この戦争が続く事で日本が受ける影響、デメリットは何ですか?

鈴木:戦争が長引けば長引くほど、終わった後の復興、それに対する財政支出が大きくなります。これも日本が支出しないといけなくなる。これもまた国民の負担になりますね。

上條:先生がこれまで尽力されてきた北方領土問題や、「サハリン2」のガス田の日露共同開発などへの影響はどうでしょうか?

鈴木:日本はエネルギー資源が無い国なんですよ。それに比べてロシアは世界一のエネルギー大国です。そして北方領土問題を解決するにはロシアと折り合いをつけるしかない。それなのに岸田総理はアメリカの言いなりですよ。だからロシアとしては、「いい加減にしないと、お前とはもう付き合えない」というシグナルを送ってきています。
 安倍元総理は、クリミア問題の時にオバマ大統領から、日本も経済制裁に参加するようにと言われましたが突っぱねました。その理由として、日本には北方領土問題がある、平和条約締結の交渉があるからと、毅然としてオバマ大統領にノーと言ったんです。それを聞いたオバマ大統領は、黙って電話を切ったそうですよ。
 その時、外務省幹部はオバマ大統領は伊勢志摩サミットに来ない、広島の原爆慰霊碑にも来ないだろうと思ったそうです。
 しかし、オバマ大統領は伊勢志摩サミットに来ました。広島にも来て献花をしました。安倍総理が勝ったんですよ。毅然と国益を考えた判断が功を奏したのです。岸田総理には、それが出来ないんでしょうか?

上條:そうですよね。安倍さんはアメリカとの外交をしながら、ロシアのプーチン大統領とも友好を深め、日本に招いて独自外交を展開していましたね。

鈴木:私は安倍元総理とは月に一度、ロシア外交について意見交換していました。安倍さんは非常に熱心に、北方領土問題や平和条約問題に取り組んでいましたよ。
 日本には、「遠くの親戚より近くの他人」ということわざがあります。まさにアメリカは遠くの親戚、ロシアや中国や韓国は近くの隣人です。仲良くやっていかなければいけない。それに早く気が付くべきです。

上條:ありがとうございました。次回も引き続き、お話を伺いたいと思います。