元通産相官僚、小林興起が物申す!①

聞き手 作家 上條影虎

小林興起、通産省官僚から政治家へ

上條:今回は日本の官僚について話を伺いたいのですが、小林先生は元通産省の官僚ですが、今の官僚をどう見ていますか?

小林:昔の官僚は、日本の国を支えていくという使命感が強かった。官僚になって、国民のために働き、国民に評価され尊敬されたんです。だから私も、東京大学に入り、法学部を卒業して官僚になろうと思ったんです。そして国家のために働きたいと強く願った。

上條:先生はお父さんから政治家を志すように言われていたと聞きますが、官僚になった理由もあるのですか?

小林:良い政治家になるためには、官僚を経験する事が必要だと考えました。政治家は選挙に勝って政治家になる。極端に言えば、勉強をしていなくても、人気があればなれる訳ですよ。そんな政治家が何の役に立ちますか?例えば大臣になって、国民の為に法案を作ろうとする。しかし政治家には専門知識が無い。それを書類にまとめて作成するのが官僚です。官僚はその分野のスペシャリストです。昔の官僚は、無知な政治家に物申した。だから私も、政治家になるために、官僚を経験する事が必要だと考えたのです。

上條:なるほど、法案を作らせる方と作る方を経験したという事ですね。

小林:私は将来政治家になると決めていました。だから必死で勉強して日比谷高校に通い、東京大学に入るために必死で勉強をしました。それは官僚も政治家も国民のために働き、国民から感謝され、尊敬される存在になりたかったからです。そして東京大学法学部を卒業して、通産省の官僚になったのです。

昔の官僚と今の官僚の違い

上條:昔と今では政治家も変わってきましたが、官僚も変わってきましたか?

小林:変わりましたね。私は通産省時代に、アメリカのペンシルバニア大学大学院に政府派遣制度に合格して留学をしました。

上條:トランプ大統領と同じ大学ですね。

小林:そうです。トランプ大統領もまったく同じ、ペンシルバニア大学の大学院ビジネススクールです。あの時に思ったのは、アメリカの大学生はお金儲けの事しか考えていないという事です。私は官僚ですから、日本へ帰ったら勉強した事を国の為に生かしたいと考えていました。しかしアメリカの学生は、国の事などよりとにかく給料が高くて、お金儲けができる環境を目指す思いの学生が多いということでした。その時に思ったのはこの国の一流大学の学生が考えることは卒業後まずどれだけ豊かな生活を送ることができるかであり、やはり、アメリカンドリームではないですが、多民族国家の中で生き抜くのはまず金だなと思わされました。それと同じ事が、今の日本で起こっているのです。

上條:日本がアメリカ化しているという事ですか?

小林:先ほども言いましたが、昔は東京大学法学部を卒業したら官僚を目指す者が多かった。しかし今は、官僚になりたい学生が少なくなっている。私が留学していた時のアメリカのように、給料の高く、稼げるところに就職を希望する学生が増えている。つまり大変な仕事で給料が安い仕事をしたくない。意識の変化、金権主義。だから官僚の不祥事も多くなっている。つまりお金が無いのは能力が無いという意識に変わってしまった。

政治家の資質と共に官僚の資質の低下

上條:時代の流れもあるとは思いますが、他にも原因はありますか?

小林:一番の原因は、官僚が昔のように国民から尊敬される存在ではなくなってしまったという事です。つまりやりがいの無い仕事になってしまった。その一番の原因は、安倍政権が行った官邸主導の官僚人事です。これによって、まじめにやっているより、官邸にごまをすり、気に入られた人間が出世できるようになってしまった。これでは真面目にやっている人間はばかばかしくなって辞めてしまう。昔の官僚は政治家が間違っていれば物を申し、正しました。しかし今は、政治家に物を申せば首が飛び、出世が出来なくなってしまった。こんな官僚たちを見て、学生が官僚になりたいと思いますか? 政治家に媚びを売って仕事は大変、国民から尊敬もされず、それに見合った給料ももらえない。これでは勉学優秀な学生から官僚の成り手は減るばかりです。

上條:官僚もそうですが、政治家の資質も低くなりましたね。

小林:政治家が二世議員ばかりで勉強をしたことがない。その二世議員が官僚の人事を決めるんですから、どうしようもない。やはり小選挙区が良くない。これでは親から地盤を譲ってもらった二世議員ばかりが当選してしまう。頑張って勉強をして、国の為に働きたいという人間が議員になれないんです。だから中選挙区制に戻して、志のある人間を議員にしなくてならない。ダメな政治家が多くなるに連れて官僚もレベルが低下していく、つまり国家全体が低レベル化していくという事です。

上條:ありがとうございました。次回は先生の官僚時代の裏話などをお聞きしたいと思います。